火山学者の警告

火山物理学者須藤靖明(九州在住)が投稿している記事を転載。
川内原発では、3万年前の姶良カルデラ形成時と同じような火砕流が
流れ込んでくることは、十分想定できる。
これでも、川内原発を再稼働させようとする事は、大きな津波はすぐには来ないとして
対策を取らずに、今回の原発事故が発生した事と同じ過ちを繰り返そうとしている。
この日本人の愚かさには呆れるほかない!


   【モニタリングで火山活動の予測は不可能】
   ~火山灰が10cm以上になれば原発の冷却水の供給は困難~
    


 私が「地球科学からの警告 原発と火山」という冊子を書いたのは1年前であった。
原発にとって火山噴火現象によるリスクが特に九州では無視できないと思ったからである。
当時は少数の火山学者の発言があったが、この課題はあまり注目されていなかった。
しかし、遅ればせながらあわてて日本火山学会も学会としてこの問題についての委員会を立ち上げたが、規制委員会の田中委員長をして「今更、言われても本意でない、夜も寝ないで観測してもらわないと困るんだよ」と言わしめた。

地震と原発は3・11以後大きな注目を集めたのとは対称的だ。
川内原発の再稼働を鹿児島県・薩摩川内市が受け入れ、再稼働が迫ってきた今日、火山島九州には大きな原発が2カ所にあり、また影響を受ける四国の原発も近くにあり、今一度原発と火山について述べたい。

1.自然現象と原発
 原子力発電所事業者は、過去の大規模火山活動の痕跡が原発敷地とその周辺にないので、原発の稼働供用期間(数十年間)は安全であると言う。
この考え方は、災害対策の一般論となっている「自然現象への対策を考える場合、歴史や痕跡のあるものの中で最大のものに対する備えを行う」という既往最大論から導かれたものだ。
この結果、9万年前の阿蘇カルデラ形成時の大火砕流の痕跡が原発の敷地内及び周辺に見いだせないから、火砕流に対する備えは必要ないということになる。

 しかし、現在、痕跡が見いだせないという調査結果は、安心材料にも不安材料にもなる。現在見いだせないだけで、過去には実際に存在していたかもしれない。原発の場合、最悪の場合はどうなるかを当然考えるべきである。
川内原発では、3万年前の姶良カルデラ形成時と同じような火砕流が流れ込んでくることは、十分想定できる。

*火砕流・・・高温の岩片と火山ガスが混合し高速で流下する現象で、堆積したものを火砕流堆積物という。
大規模なものは軽石を含み、軽石流という。高温で堆積し、圧密を受けると溶結凝灰岩となる。
九州は多くの火砕流堆積物で覆われている。

2.モニタリングで火山活動の予測は不可能
 原子力発電所事業者は、現在、大規模なマグマ溜まりの存在の兆候が無いので安全であるが、念のため、将来の巨大な火山活動に対する備えとして、モニタリングを行って対策を立てるとしている。未曾有の災害を生じさせた東北地方太平洋沖地震の教訓で分かるように、地震の発生を予知することは現段階では不可能である。

火山噴火は地震活動と比べ、観測網が比較的充実しているので予測は少しは可能となっているが、火山活動の形態・推移はもちろん活動規模までの予測は不可能であるのが現状だ。
つまり、モニタリングでは噴火を予測することが分からない。
ある現象が前兆らしいと分かるのは、噴火活動が始まってからである。一歩譲って、前兆と判断されたとしても、既に時間的余裕がなく、予測が出来なかったことと同じとなる。

また、前兆現象を前兆として把握できるかどうか、把握出来ることもあるが、出来ないことの方が多い。
噴火が起こってから前兆だったことになるのが多くの場合だ。火山活動が進行中では大規模な活動に移行するかどうかの判断は、極めて難しい。

 大噴火がやがて起こるかもしれない、大噴火に移行するかもしれないと考え、警戒を強めることは重要であるが、現代の社会システムが不確実なことに対応できるかどうかは非常に疑問だ。
まして、原発のような簡単に止めたり稼働したりするのに多くの時間が掛かる場合は困難であろう。もっと言えば、我々は、巨大火山噴火活動を経験していないので、また、巨大噴火を近代的な物理学的観測でとらえた例もないので、モニタリングを考慮していると言っても安全対策にはならない。

現在の予知技術は、これまでのたかだか数十年の観測経験に基づいている。
経験しない破局的噴火を予測することは不可能と言わざるを得ない。
一方、それを経験してからでは既に遅すぎ間に合わない。

*モニタリング・・・噴火を予測するために、事前にマグマの供給量(山体膨張・収縮=地盤変動)・その動き(上昇速度と量・マグマの総量)・その中の揮発性物質の量(爆発力大小)・地殻の強度(地震)などを検知するために、地震・地磁気・地殻変動・重力・火山ガス・地下水温度と組成などを観測すること。

3.九州の特殊性
 九州は、巨大火山活動だけでなく、地殻が引っ張られる力が活動する地域となっている(地殻応力が伸張場)。
このような地域では、どこでも火山が誕生する可能性がある。
この火山活動は、日本海側の石川県金沢市付近から山口県萩市周辺・北九州そして五島列島まで線状に分布している。
九州の北西部では数十万年前に非常に活発な火山活動していた。
多くは小型単成火山で、ハワイ島のような噴火をして、1日から数ヶ月間の非常に短期間で形成された。
これらの火山は、独立である場合もあれば、いくつかが線状に群となるときもある。そして、火山が今まで無かったところに突然噴火が起こることもあり、ノーマークとなっている。
火山活動は小型で噴火規模も小さいので危険視されないが、原発の近くで生じることもある。玄海原発はこのような地殻運動を生じる地域に接近している。

 さらに、海域での火山の誕生やそれによる火山が大規模に崖崩れして、津波も発生する。
地震による津波が注目されるが、火山の崖崩れは、時速150kmくらいの速さで流下し、到達距離は崩壊の発生した標高の10倍から20倍の距離になる。
江戸時代に長崎県島原で発生した火山体崩壊で大津波が熊本県有明海沿岸に押し寄せ、多くの犠牲者が出た。また、1741年に北海道渡島大島の噴火で大崩壊が生じ、大津波が発生している。
巨大噴火ばかりでなく、小型の噴火活動に対しても注意を払うべきである。

 いずれにしても、私たちが生きている間に甚大な災害を生じる火山活動を経験すると考え、想像した方がよい。
火山噴火のような過酷な自然現象の発生は非常に稀だが、その発生が数年後になるのか、数万年後になるのか、現代科学ではわからない。そして発生したら大きな災害をもたらす。

 一方、原子力発電所の稼働期間は数十年、使用済み燃料や核廃棄物の保管期間は数万年だが、原子力発電所の事業者は原子力発電所の稼働供用期間のたかだか数十年間という時間スケールで、このような過酷な自然現象に対する原子力発電所の安全性の確保を考えている。

ここが、原子力発電所事業者の考え方(政府の考えも)と科学者の常識との間の大きなずれというか、根本的な視点の違いがある。日本は、東側がプレートの沈み込み帯となって地殻がほぼ東西方向に圧縮され(圧縮場)、一方、九州の西側では逆に地殻が裂ける力が働いていて(伸張場)、極めて不安定で、活発な地殻変動地域である。
どこにも安定した地域が無いのが原子力発電所にとって不幸なことである。

*伸張場・・・プレートが衝突する場所では地殻が圧縮されて圧縮場となる。
日本の太平洋岸が相当する。その結果、3・11の地震が生じた。
一方、日本海側や東シナ海では左右に地殻が広がる力が働き、伸張場となっている。
そこでは壱岐・五島列島・韓国チェジュ島など単成火山が生じている。

4.火山灰について
 火砕流だけでなく、火山灰の問題も深刻である。降下火山灰の厚みが10cm以上になれば、すべてのライフラインは失われ、原子力発電所にとって最重要な冷却水の供給が困難となろう。
江戸時代、富士山が噴火したとき、江戸で数cmの火山灰が積もった。
現代社会は、そのような大噴火を経験していないが、規模の小さい噴火活動は、既に多くの火山周辺で経験している。大規模な自然現象が生じ、過酷な災害となる可能性のある日本では、広域の避難は不可能となる。
また、大規模災害発生時には、原子力発電所はそのまま放置されることとなる。こんなことは許されない。

 モニタリングで前兆現象を把握でき、事前に避難を考えたとしても、被害が広範囲に及ぶため避難する場所や避難する経路が無いので、お手上げとなる。当然、原子力発電所は放置される。
九州で大規模な火山噴火が発生すれば、その火山灰によって九州・四国の玄海・川内・伊方など広域に存在する原子力発電所の全てが機能しなくなり、西日本全域が放射能汚染し立ち入り不可能となることが予想される。
数千万人の避難民の行き所はない。この種の噴火は非現実的ではなく、発生の可能性は充分ある。
自分たちの問題、子どもたち、孫たちのために、考えるべきである。


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