原発の破たん

琉球大学名誉教授の矢ヶ﨑克馬さんからの『 原発事故避難者通信91号2020・11・30』の一部を転載する。

以下転載

『原発事故避難者通信91号2020・11・30』

原発はあらゆる点で廃止すべきである。

原発は、科学的、技術的、社会的、医学的、倫理的、発電効率的、脱炭素論、健康保護、全ての分野で破綻しています。


被曝防護の体系は住民を防護せず、心理学的支援と称して放射能無害論を説き、強制的に被曝させる!
コロナでは政府の施策がむちゃくちゃであろうが、とにかく「感染防護」を謳う。原発事故では逆に被曝基準を引き上げ、放射線無害論を説き、「食べて応援」を強制する。この違いが本質的違いを語ります。

国家戦略として「核武装の潜在的能力確保」のための原発維持が故に、あらゆる犠牲を見えなくさせているのです。国家権力の都合のために人類の英知が拒否されている現実の舞台です。

来年1月22日には「核兵器禁止条約」が発行します。日本政府をこの条約に批准させ、同時に原発維持政策を廃棄させる必要が有ります。原発は基本的人権を尊重する立場からは、即時廃棄すべき代物です。現在日本の危機は、こともあろうに、開始から40年を超える老朽原発を再稼働させようとしたり、もんじゅの一世代前のポンコツ炉「常用」(実験炉)を再稼働させようとしている処に国家的無責任が存在しています。福島事故後の「放射性廃液」を人為的に海に流そうとする破廉恥な無責任があります。

以下にあらゆる側面に於いて原発を維持すべきでない証拠を簡潔に挙げます。住民の全てに、原発を廃止しなければならないことを理解して、廃止に力を合わせることを訴えます。

① 科学的破綻
核分裂(原発、原爆)は莫大な放射能を生み出します。人類は、放射能を科学的に軽減させる手段を持たないのです。ただただ、10万年もの年月、環境から隔離して冷却しつづけなければならないのです。原発は科学的に完璧に不能力を知りつつ、政治的に核戦略によって強引に実用化した欠陥テクノロジーなのです。典型的に、住民の犠牲や環境の破壊をもたらし「後は野となれ山となれ」の「力」の悪業なのです。

② 技術的破綻
世界の地震の10%は日本周辺に生じており、日本は世界一の地震大国です。東電福一事故が地震で破壊されたのかあるいは津波で破壊されたのかは、他の原発の耐震基準と関連して重大問題です。各種事故調によって「福一は津波で電源を失いメルトダウンした」と結論づけられていますが、そうではなく地震による配管破断によるようです。東日本大震災の際に各種「事故調」には開示されなかった過渡現象記録装置の開示を得た元炉心管理専門家の木村俊雄氏によれば、圧力容器につながる「ジェットポンプ計測配管」の破損により、地震の後、わず か1分30秒で、「ドライアウト(原子炉の燃料表面が蒸気に覆われて伝熱能力が低下し、燃料表面温度が上昇する状態により燃料破損が生じる)」が起こっていた可能性が高いのです(木村俊雄:福島原発は津波の前に壊れた,文藝春秋(2019/5、pp170~)。

このことは樋口英明氏による最近の論考「原発耐震性は住宅以下」(ヒバクと健康LETTER37号)の記事によって、地震による配管破断によるドライアウトの可能性を完璧に裏付けています。ちなみに、東電福一の耐震設計は600ガル、東日本大震災の震度は2933ガル、住宅耐震設計強度は5115ガル等であるとされます。樋口氏の表1、表2を添付ファイルに示します。
また、高放射能核廃棄物を冷却しつつ10万年間環境から隔絶しなければならないことは地震列島日本にとっては誰にも保障できないことです。

③ 社会的破綻
事故後10年になろうとしている現時点で、未だに故郷を追われて数万人の避難者が存在します。原発事故は、永久にと表現して良いほどに、故郷および社会的つながりを完全に破壊するものです。一旦事故が生じればこの様な社会的破壊をもたらす「原発は絶対に稼働させるべき人造物ではない」ことは、この事実だけによっても民主主義社会として完璧に断言できるのです。

④ 医学的破綻
LNTを否定する「100mSv論以下は安心」は日本原子力ムラによる最悪の虚言です。多発している小児甲状腺がんを「原発事故とは関係ない」とする「福島県民健康調査検討委員会の結論は完璧に間違っています。統計処理には「人数の規格化」と「時間の規格化」が必要であるにも拘わらず人数の規格化のみしか行っていない故に、発症率の放射能汚染が隠されてしまうのです(高汚染地域の検査が先行する)。この様な科学の不正によりチェルノブイリでは国際原子力ムラも認めざるを得なかった唯一の疾患「甲状腺がん」も福一では「関係ない」ことにされています。

以上の意図的な虚構に従って、住民を保護しない、「予防医学的処置」の実施も無い、のが日本です。診療の基準にICRPを物差しとして用いることは誤りです(ICRPは科学の体を成さない:矢ヶ﨑分析の結論)。

⑤ 政治的破綻
事故が起こり住民に放射性物質が襲いかかったとき、住民を保護するどころか「放射線被曝基準を(一般住民に対しては)20倍につり上げました。法律により約束してきた住民保護の国家による明確な破壊であり、裏切りです。原子力災害対策特措法に基づく約束事項を、事故が生じた際には完全に実施しなかったという驚くべき事実があります。例えば原発立地4町を現地災害対策本部から不当にも除外しました。住民のパニックを恐れるという名目でスピディーが不公開とされ、安定ヨウ素剤の配布が阻止されました。これらは双葉病院の重症者をバスで移動させ、多数の犠牲者を生じる悲劇の引き金となったのです。

⑥ 脱炭素論の虚偽
原発効率は約3分の1であり、発電量の2倍が地球を直接温暖化します。その熱は海洋に捨てられるので、海洋の温度を挙げ、大量の二酸化炭素を空中に放出させます。原発は2重の意味で地球温暖化を促進させるのです。発電単価も全課程を含めるととてつもなく高いものです。

⑦ 倫理的破綻
2007年のICRP勧告は今までの「放射線から住民を守る」ことから「高汚染地帯に住民を住み続けさせる」ことにより強制的にヒバクさせる基準へ転換させたのです。歴史的最悪の転換で、原子力産業の生き残りのための開き直りです。事故の際には最大100mSv/年迄許容させるとしているモノなのです。ICRPの被曝防護3原則は功利主義そのものであり、命より原子力産業稼働を最優先するものです。
その防護第一原則は「正当化」で、操業により生じるリスク(放射線被曝による健康被害・死亡等)と発電という公共の利益を天秤に掛け、公益が大きければ稼働が許される、というもので、完全に住民の人格権をないがしろにすることが許されているものです:原発は民主主義破壊が許される特殊産業なのです。

第二原則は政府と企業の許す社会的経済的範囲内で防護すれば良いことを示し、住民を最大限に防護するものではありません。この基準は政府指針を左右し、原子力ムラの大嘘(下記)と相まってとんでもない住民犠牲をもたらしました。

⑧ 虚偽の数々――反科学の防護原子力むらによる人格権の破壊
「笑っていれば放射線は来ません」(山下俊一)(⇒「アンダーコントロール」「健康被害は一切ありません(安倍元首相)」)、「100Bq/kg以下は安全です」、「食べて応援」、「風評被害払拭リスクコミュニケーション」等々は、住民を統治するための「心理学的ケア(IAEA1990会議)」が具体化したものです。原発持続のための大嘘が政府と原子力ムラにより猛威を振るいました。

⑨ 健康保持か?強制被曝か?
コロナ禍では仮にも「感染防止」が基本でありその建前が歪んだことは無いと思います(たとえ経済優先の政策であってもこの建前は掲げ続けます)。ところが放射能に関しては180度向きが違います。住民保護の法律基準値が20倍に跳ね上げられ、チェルノブイリ法では住むことも生産することも禁じられた汚染地で100万人を上回る住民が生産を余儀なくされました。それが「食べて応援」と全国に被曝が拡散されました。

コロナでは「感染防止」が建前としては原則であることに対して、放射被曝では被曝を防止せず、逆に「強制被曝」が実施されました。スローガンとしても虚偽に満ちたモノでした。

この違いこそが、原発を完全廃止しなければならない本質に直結します。





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