武漢コロナウイルスの周辺

アメリカ在住の田中宇氏のメルマガが新型コロナウイルスに関し
非常に興味深く、記憶と記録の為にも以下掲載する。
尚、関連URL等は削除した。

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★武漢コロナウイルスの周辺
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昨年末以降、中国・武漢から世界に広がっている新型コロナウイルスの感染の発
生原因を考える際、最も重要な存在は、武漢にある中国科学院傘下の武漢ウイル
ス研究所(武漢病毒研究所)である。この研究所は、02年末に広東省から発生
したSARSの感染経路について研究していた。
武漢ウイルス研は、中国のSARS研究の中心地だ(北京のウイルス研から中心
地が移ってきた)。
SARSもコロナウイルスであり、今回のウイルスとかなり似ている。武漢研は、
SARSのウイルスがコウモリからハクビシン(野生猫)を経由して変異しつつ
ヒトに感染したことを突き止めた。

ハクビシンとヒトのSARSウイルスはほとんど同じもの(ゲノムの配列が10
ヌクレオチドの違い)であり、コウモリが独特の免疫システムによって多数の
ウイルスを体内に保有し続けていることを加味すると、SARSの発生経路は
コウモリから野生のハクビシンに移り、広東省内の野生動物食肉市場に入荷した
生きたハクビシンから売り子や買い物客に感染したと考えられる。


武漢研の研究者たちがbioRxivで発表した調査によると、ヒトが感染した新型ウ
イルスのゲノムの配列は、コウモリが持つ同種のウイルスの配列と96・2%の
割合で同一で、ヒトのSARSウイルスとも79・5%の割合で一致している。
別の研究者Trevor Bedfordによると、今回のヒトの新型ウイルスと、最も近いコ
ウモリのコロナウイルスRaTG13との配列の違いは1100ヌクレオチドとなっている。

SARSのほか、2012年にサウジアラビアから発生したMERS(中東呼吸
器症候群)も、コウモリからラクダに感染し、発症したラクダを看病した人など
のヒトに感染したとされている。SARS、MERSと今回の新型ウイルスは、
いずれもコロナウイルスだ。1976年から10回以上アフリカで発生している
エボラ出血熱のウイルスも、コロナと別のウイルスだが、コウモリからサルなど
野生の哺乳類を経てヒトに感染したとされる。おそらく今回の新型ウイルスも、
華南のどこかに生息するコウモリから他の哺乳類に感染し、そこからヒトに変異
しつつ感染したと推測できる。武漢市の野生動物食肉市場で売られていた生きた
野生動物からヒトに移ったのでないかと中国当局は言っている(原因はヘビだと
いう説も流れたが、哺乳類であるコウモリから爬虫類であるヘビを経由して、再
び哺乳類であるヒトに感染したとは思えない)。


コウモリは、飛行する唯一の哺乳類だ。飛行には多大なエネルギーが必要で、飛
行可能になるための進化の過程で免疫システムが独特なものになっている。他の
哺乳類だと発症してしまうウイルスが、コウモリの体内では消滅も発症もしない
共存状態で維持され、その結果、コウモリはヒトなど他の哺乳類にとって危険な
ウイルスを無数に持っている。コウモリが持っている危険なウイルスのほとんど
(狂犬病以外)はヒトに直接に感染せず、コウモリより大きな哺乳類を経て変異
を重ねてからヒトに感染する。SARSの場合、コウモリからハクビシンを経て
ヒトの感染に至るまで25-60年かかっていると推測されている。

武漢研は、SARSの発生経路を研究する際、これらのコウモリ由来の各種のウ
イルスが他の動物やヒトに感染していく状況について詳しく調べてきた。武漢研
の研究者は、中国各地や周辺諸国を回り、コウモリやその糞尿などを採取し、そ
こからウイルスを分離して調べてきた。コウモリが持っていたウイルスを、研究
所内で他の動物に感染させてみる動物実験も繰り返されてきたはずだ。中共が
SARSの原因解明・再発防止に熱心だったほど、ウイルスの採取や動物実験も
熱心に行われてきたと考えられる。各地のコウモリから採取されたウイルスは多
種多様で、その中に今回の新型コロナウイルスが含まれていたとしても不思議で
ない。

今回の新型ウイルスが、どこかの山でコウモリから野生哺乳類に移り、その動物
が武漢の野生市場で生きたまま(宿主の動物が死ぬと間もなくウイルスも死ぬ)
売られている間にヒトに感染し、潜伏期間中のヒトから他のヒトに急速に拡大し
て今の事態になったという「自然発生」の可能性はもちろんある。しかし同時に
武漢市には、厳重に封じ込められている状態であるが、ヒトに感染しうるコウモ
リ由来の多数の危険なコロナウイルスが存在する場所としてウイルス研究所が存
在している。これは偶然の一致なのか?。ウイルスが研究所から漏れた「人為発
生」の可能性はゼロなのか。

実のところ中国では、SARSの発生経路を研究する過程で、04年4月ごろ
4回にわたり、北京の研究施設からのSARSウイルスの漏洩が起きている。
SARSに対する研究は当初、北京の国立ウイルス学研究所で行われていた。
この研究所では、生きたSARSウイルスを使った研究をバイオセーフティな
実験室で行い、実験の後、ウイルスを不活性化(熱湯やアルコールで殺す)して
から一般の実験室に移していたが、不活性化の処理をした後、本当にウイルスが
死滅した不活性状態になっているかという検査が不十分で、一部のSARSウイ
ルスが人に感染しうる活性化した状態のまま一般の実験室に移して置かれたため、
通りかかった無関係な職員らがSARSに感染し、感染を知らないまま実家に
帰った看護師の一人が実家で発症し、看病した母親が感染・発症して死ぬ事態な
ど、ウイルス漏洩事件に発展した。この事件は報道され、ウイルス研究所の所長
ら幹部5人が処罰された。

ウイルスの研究施設の所員の感染による漏洩事件は、人類のウイルス研究の歴史
とともに古い。たとえば英国では、1963-78年に天然痘の研究機関で所員
が感染して外部にウイルスを漏洩する事件が80件も起きている。この間、天然
痘の発生地域からの帰国などによる自然発生は4件だけだった。当時の教訓から
その後、米英などの主導で世界的に実験室のバイオセーフティの強化が行われた。
SARSに関しても、中国だけでなく、台湾とシンガポールの研究所で03年中
に1回ずつ、所員の感染によるSARSウイルスの漏洩が起きている。SARS
はその後、自然界経由で再発していない。

中国でのSARS研究は、発生後しばらく北京のウイルス学研究所が中心だった
が、その後、2017年に武漢のウイルス研究所にバイオセーフティの最高レベ
ルであるレベル4(BSL-4)の研究施設が新設され、武漢に中心が移った。レベ
ル4の施設は武漢が中国初で、北京はレベル3だった(SARS研究の中心を北
京から武漢に移転した理由は不明だが、発生地の華南に近く、コロナウイルスに
関係しうるコウモリや野生動物を入手しやすいからか、もしくはウイルス漏洩が
起きるなら首都の北京でなく遠くの地方都市の方がましだからか?)。中国には
もう一つ、北辺のハルビン市にある中国農業科学院ハルビン獣医研究所にもレベ
ル4の実験施設が18年に完成し、こちらは鳥インフルエンザを中心に研究して
いる。

バイオセーフティーのレベルが高いほど、ウイルスの漏洩を防ぐための管理が厳
重になる。きちんと管理されている限り、武漢での漏洩の可能性は北京より低い。
しかし同時にいえるのは、今回の新型ウイルスが発症前の潜伏期間中に他人に
感染してしまうため、潜伏期間中の感染が見られていないSARSウイルスに比
べ、所員の感染を検知しにくいことだ。ウイルス研究界は、所内の感染にとても
敏感だ。SARSを経験した中国のコロナウイルス研究は世界的に高い水準で、
研究者の多くは米欧研究所での経験も積んでいる。しかしそれでも、今回のウイ
ルスなら、研究所が漏洩に気づいた時にはすでに街中に感染が広がり始めている、
といった大惨事があり得る。この大惨事は、まさにいま武漢で起きていることに
近い感じがする。こうした考察を経ると、自然発生(野生市場経由)の可能性と
同じくらい、人為発生(研究所から漏洩)の可能性があることがわかる。

人為発生(研究所から漏洩)の可能性を前提にさらに考えると、人為発生が真相
であり、それを中共中央が知ったとしても、それが公式化せず、その後もずっと
「野生市場経由の発生」が定着していく可能性がある。今回の新型ウイルス拡大
が研究所からの漏洩によるものだったとして、それを公表してしまうと、医療や
科学の研究全般に対して中国が近年積み上げてきた信用が世界的に崩れ、習近平
を含む中国共産党全体の責任になりかねない。武漢の野生動物市場の訪問者に初
期の感染者が多いことが発表されているが、人為発生が真相な場合、これは歪曲
された目くらましかもしれない。

人為発生であったとしても、中共上層部の意図として行われた可能性はない。自
らの権威をできるだけ高めたい習近平が、自分を陥れることをやるとは思えない。
何者かが武漢の研究所からウイルス漏洩を意図的に引き起こしたのだとしたら、
それは中国側でなく米国側だ。トランプ大統領と軍産複合体は、それぞれが正反
対の意図で、中国と米国の関係を、協調から敵対へ、密接関係から関係分離・
デカップリングへと転換しようとしてきた。トランプは、中国を米国から分離し
つつ強化して覇権構造を多極化しようとしている。軍産は、中国を米国から分離
しつつ弱体化して冷戦構造と米覇権体制を再生しようとしている。トランプは、
従来の世界支配層だった軍産の一部になっているふりをしつつ、軍産の支配構造
を破壊している。

見かけ倒しの米中貿易協定

トランプも軍産も、中国と米国との関係を経済政治の両面でデカップリングさせ
たい。そして今回の新型ウイルスの発生は、米中のデカップリングを劇的に進め
ている。これを意図的にやった勢力が米国にいるなら、新興勢力であるトランプ
系でなく、昔から中国にスパイを置いている軍産だろう。今回のウイルス事件で
いうと、たとえば米国の大学に滞在中に軍産に脅迫勧誘されて米国のスパイとな
った中国人研究者が武漢研の中にいて、その人物がウイルス漏洩を誘発したとか
いったことが考えうる。考えることは可能だが、実証は不可能だ。非現実的な感
じもする。たとえ中共中央がスパイの存在は把握していたとしても、永久に真相
は公開されない。どちらにしても、野生市場経由の自然発生説が公式説明として
定着する。そうならない場合、改めて考察する。

その他、ネット上の英文情報の中には、今回のウイルスが意図的な人為発生であ
るという指摘がいくつかある。それに対する検証も興味深いのだが、それはあら
ためて書くことにする。









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